主人公はハツという高校生の女の子。
高校一年生の5月~7月ころの話。
①主人公のハツ
はクラスでは浮いた存在となりつつも、周りをよく観察している。
周囲に上手く溶けこんでいるように見えて、溶け込むために無理をしている中学時代の友達絹代の様子を見て、自分はそんな風にはなりたくない、とそっけない態度をとっている。
しかし、やはり心の拠り所でもある絹代の心までも向こうへいってしまいつつあることに寂しさを覚えるのであった。
※画像はイメージです。イメージ、主人公ハツは眼鏡かけてないです。たぶん。
<俺の考察>
高校生くらいの思春期って一番難しい。
周りに溶け込みたいけど、溶け込むために周りに合わせる自分が嫌、的な。
それでも、溶け込めないでいると浮いて、居場所がいなくなるのも嫌だから、適当に周りに合わせるという。
しょうもないことで、テンションを合わせたり、無理に作ったりする笑顔が気持ち悪い、と分かっていても、そうしてしまう自分がいたりいなかったり。
自分の世界が、”学校”という一つの限られた空間しかない、あの息苦しさを上手く表現していると思いました。
ただ、大学や社会に出ると、”世の中にはこんなにいろんな人がいるんだ、知らんかった”レベルで世界が広がるので、この頃の悩みなんてホントちっぽけもちっぽけなことが多いですよね。
②そんな中
同じようにクラスで浮いた存在である”にな川”に、自分が昔、モデルの”オイチャン”に偶然街で会ったことがあるという話をしたところから興味を持たれることになる。
にな川は、オイチャンの追っかけだったのだ。
しかも、ただの追っかけではない。
”超絶ヲタク”なのである。
にな川の自室には、オイチャン関連の雑誌の切り抜きや、そのほかいろいろなものが詰め込まれた大きなケースがある。普通は服などを入れて、押し入れにしまっておくような、透明なケースだ。それが机の、普通なら足をぶらぶらさせておくスペースに置いてあった。
そのケースの中を見たハツは、オイチャンの顔の切り抜きと、裸の幼女の身体がちぐはぐにくっつけられている、今でいう”自作アイコラ”を見つけ、そっとポケットに入れる。
それからそのにな川のことを気にしつつ、灰色の日常を過ごしていく。
※画像は六角精児(57)さん。画像と文章は関係ないです。
<俺の考察>
自分と同じように浮いた存在である、”にな川”は、主人公ハツとは正反対に”周囲を全く気にせず自分の興味のあることだけに夢中になっている”ことが強調されています。
その最もな表現が、”自作アイコラ”をすっと返したときに
「あ~、これ無くしたと思ってた。気にいってたんだよね~」
と、自分がそれを作っていたことをハツに知られたと事に関して恥じることもなく、それを勝手に持って行っていたハツに怒ることもなく場面が進んでいくところに現れています。
③灰色の日常の中
ハツは、学校でにな川を観ている時に身体が火照り、でもそれを冷静に見ている自分も自覚するという体験をしている。
そして、オリチャンのライブのチケットを買うために徹夜で並んだがために風邪を引いたにな川のお見舞いに行くのであった。
彼の部屋に行って、桃を食べたにな川が桃の汁が唇にしみる、と言った時に、ハツは半開きの彼の唇のかさついているところを、てろっと舐めた。
さらに、自分が学校でにな川をケイベツしたような目で見ている、とにな川に言われたことで、自分はそんなつもりでなかったことや、にな川が自分のことを見ていたことに驚く。
オイチャンのライブに行かないか、と誘いを受け、絹代と3人で行くことになるのであった。
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<俺の考察>
いや~、これこそ思春期のよくわからない感情というかなんというか。
好きという感情や、性的な描写がないのにもかかわらず、このシーンを読むだけで、なんかゾクッとしますよね。ハツとにな川の息遣いが聞こえてくるくらいの。
さすがです。
④オイチャン
のライブでは、食い入るようにオイチャンを見ているにな川と、そのにな川を見ているハツ。ライブ終了後に、オイチャンに一番近づいたはずのにな川は、一番遠く感じた、とつぶやくのであった。
<俺の考察>
これっすよね、最後。アイドルを追っかけすぎて、近くに近くに行こうとしても、結局はアイドルはアイドル。それを知る、思春期高校生。
そして、そんなにな川を見て、背中蹴りたくなっているハツ。
このシーンの前にも背中蹴っているんですけどね。
総じて、ハツはにな川が苦しんでいる姿を見て、喜ぶSなんですよね。
ただ、にな川にとって、ハツは特に特別な存在ではなく、オイチャンに近づくための手段であったことは最後まで変わっていないという感じ。
<まとめ>
高校生特有の思春期拗らせ女子、ハツが、ひょんなことからアイドルオタクと仲良くなって、自分の中のドSが出てくる小説。
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